【実験SSbP  ラオウ 対 江田島 平八】 


199X年。世界は核の炎に包まれた!! 海は枯れ地は裂け・・あらゆる生命体は絶滅したかにみえた・・だが・・人類は死滅していなかった!! 

 「あれにみえる建物にいる輩が、拳王様にさからう不届き者でございます」  ・・傍らの側近が静かに報告する。 ・・世紀末覇者・拳王。 
その正体は、北斗3兄弟の長兄、ラオウ。 ・・ラオウはその建物を鬼神の様な形相で睨み付ける。その殺気に反応し、愛馬・黒王がいななく。 
 「ぬうう・・。おれの覇道に最後まで逆らう気か・・。男塾塾長・江田島 平八めッ!!」 ・・その建物。核戦争前は「鬼の棲家」と呼ばれる。 
しかし今。この暴虐の世にあって、世紀末救世主・ケンシロウと並ぶ希望の光。 ・・今、この地は。拳王軍により、統一されようとしている。 
世紀末覇者の軍により、弱き者が強き者に支配される世界になりつつある。 ・・だが。ここ男塾は、弱き者たちの為に拳王軍と戦い、退けている。 
覇権を握りつつあるラオウにとって、ここ男塾は見過ごすわけにはいかぬ反乱分子である。 ・・そしてその指導者、男塾塾長・江田島 平八。 
 (決着を付けねばなるまい・・江田島とケンシロウを屠った後にこそ、拳王恐怖の歴史は始まるのだ・・)  決意を秘め、男塾に向かうラオウ。 
側近がラオウに尋ねる。   「拳王様、攻め込みますか・・?」   ラオウの後ろには数千の大軍が控える。だがラオウはそれを制して言う。 
 「うぬらが何千人いようが、あ奴らは倒せぬわ・・。おれ一人でいく。うぬらはここで待っておれいッ!!」   ・・その言葉を受けて側近。 
 「な、なりませぬ拳王様・・。お一人で向かわれるなど・・」  だがラオウ。その言葉を無視し、黒王を駆り、ゆっくり男塾の門をくぐる。 
 (江田島という男・・。何人掛かりで敵を討つ男ではないわ)  ・・威風堂々、男塾の校庭に姿を現すラオウと黒王号。すぐに気付く塾生たち。 

虎丸はその姿を見て叫ぶ。   「け、拳王じゃあ・・拳王自ら攻めてきおった!!」  ・・色めき立つ男塾。匿われている村人は悲鳴を上げる。 
桃や邪鬼が戦闘態勢を整える。富樫が塾長室に駆け込む。   「オ、押忍、じ、塾長、拳王軍が攻めてきやした!!」  ・・だが江田島 平八。 
以外に穏やかな顔で静かに応える。   「わかっておる・・。あやつが一人で乗り込んできたというなら・・。ワシが行かねばなるまい・・」 
江田島。鬼ヒゲたちの制止も聞かず、校庭に出陣する。無論、なんびとたりとも一切手出し無用、との言葉を残して。 ・・ラオウが笑って言う。 
 「フハハハ・・。貴様の血を、我が覇道の礎としてくれるわッ!!」   桃たち塾生が固唾を飲んで見守る。 ・・江田島。豪快に笑って応える。 
 「存分にかかってくるがいい・・。ワシが男塾塾長、江田島 平八であるッ!!」   (イメージイラスト

ラオウが黒王から降りる。江田島は動かない。ラオウが近付く。両者の間合いがゆっくりと縮む。 
・・ジリジリと。ラオウが近付く。 ・・両者の制空権が髪一本の幅を残し、触れ合いそうになる。 
あと一歩。いや数センチ。どちらかが前に出れば、完全にお互いの拳が届く距離。 ・・だが。 
そこから動かない。 ・・数分が過ぎる。江田島・ラオウともに、顔に汗が滝の様に浮かぶ。 
・・異常な緊張感が男塾を支配する。静寂が周りを包む。 ・・その時。江田島の目に汗が流れ込む。 
カッ。ラオウが目を見開く。   「江田島よ、塵と砕けよッ!!」   ・・ほんのわずかな隙。 
いや、隙というには余りに酷な運の天秤。だが達人同士の闘いは、そのわずかが全てを決する。 
 「708ある経絡秘孔を全て突き切ってくれるわ!! どうりゃあああッ〜!!」  ラオウの咆哮。 
塾生や村人の悲鳴。ほんの数秒の間に、屈強な指がマシンガンの様に速く、江田島の経絡秘孔を襲う。 
 「ぬうあああッ!!」  ・・最後のラオウの怒号。江田島は仁王立ち。しかし白目を剥いている。 
 「何という肉体よ・・秘孔を完全に突き切れんとは・・だが貴様はもう動けん。貴様の命はあと10秒」 
富樫や虎丸の泣き声が響く。 ・・江田島。金縛りにあった様に、ゆっくりと前のめりに倒れる。 
ラオウ。その姿を見て大きく笑う。  「この程度の男が今まで歯向かっていたとは・・死に失せいッ」 
だが。倒れた江田島の肉体は、完全に地に伏せる事無く、何故か空中に浮いている。  「ぬうう?」 
ラオウは一瞬事態がつかめない。1号生筆頭の桃がつぶやく。  「とんでもない人だぜ・・あの人は」 
 「ラオウよ・・貴様はワシの肉体全て奪った気でおったが・・たった一つ自由になる所を忘れていた・・」 
見ると。江田島の股間から、雄雄しく隆々とそそりつつ一物が江田島を支えている。ニヤリと笑う江田島。 
 「ワシの肉体は全身全てが武器ッ!! 己の常識で人を判断すると死ぬ事になるッ!!」  驚愕のラオウ。 
一物を支点にし、回転し強烈な拳激をラオウに放つ江田島。血を流しながら吹き飛ぶラオウ。 
 「ワシが男塾塾長、江田島 平八であるッ!!」      

 「ぬうう・・己の股間をも武器にするとは・・しかし貴様の命はもう・・な、何いッ?」 
ラオウの視線の先の江田島。肉体がパンパンに膨れ上がっている。血管が異常に浮かび上がる。 
雷電がうめく。  「ぬう・・あれは世に聞く秘孔封じ・・」  「何いッ、知っておるのか雷電ッ」 
絶妙のタイミングで合いの手を入れる富樫。その隣で虎丸が泡を吹く。コンビネーションは万全だ。 
秘孔封じ。秘孔を何らかの手段により遮断し、技を無効化する奥義。しかし何故塾長が・・? 
 「わはははは・・気合いでそんなもの吹き飛ばすわい」  江田島は涼しい顔である。ラオウは怒る。 
 「ぬおお・・この拳王の拳を愚弄するとは・・ならばその肉体を、微に砕ききってきれるわッ」 
ラオウ不敗の拳、天将奔烈。剛拳が江田島の肉体に突き刺さっていく。だが江田島。微動だにしない。 
すべて全く防御せず、肉体の力のみで受けきっている。   「・・ぬ・・バカな・・」  焦るラオウ。 
 「なんだこの拳は・・蚊でも刺したかッ」  ・・江田島の何の技法も無い突きがラオウを捕らえる。 
だがその素人の様な拳は恐るべき威力を秘め、ラオウの肉体を一発で叩き壊す。  「これが突きじゃあッ〜」 
 ・・この拳王の力が全く通じない・・。生まれて初めて感じる恐怖に震えるラオウ。江田島が更に追撃する。 
 「これが蹴りだッ」  ・・単純な前蹴りに、世紀末覇者と呼ばれる男が無様に転がりまわる。 

全て己の拳で支配してきた男、拳王ラオウ。その男が更なる強大な力を前に、地に伏している。 
 (ぬうう・・敗れるのか・・この拳王が・・。このラオウがッ!)  ラオウの脳裏に。 
美しい女と逞しい男の顔が浮かぶ。 ・・ユリアとケンシロウ。愛する女と決着を付けるべき弟。 
 (負ける訳には・・いかぬッ!!)   ・・転がるラオウにのしのし近付く江田島。 
決着の一撃を決める為に。   「ラオウよ・・。貴様の腐った拳、このワシが封じてくれるわ!!」 
江田島の剛拳が倒れたラオウの後頭部を狙う。全てを砕く威力を秘めた拳。 ・・この拳が決まれば・・。 
剛拳がラオウを襲う。後数ミリで。ラオウの頭蓋は粉々に砕け散る。 ・・しかし。カッ。ラオウの目。 
大きく光り、江田島の拳はラオウの肉体をすり抜ける。   「フフフ、よけおったか」 江田島は追撃。 
ブン、ブンと剛拳と蹴りを乱打する。 ・・しかし。その全ての攻撃はまるですり抜ける様に当たらない。 
・・名解説の雷電が唸る。  「あ・・あれはまさか、北斗神拳究極の奥義・・。無想転生ッ?」 
無想転生。 ・・この世で最強の物は無。その無より転じて生を拾う。この絶体絶命の場で、ラオウはついに。 
究極の奥義に目覚めた。 ・・己より強い者を前にした故に。ラオウの肉体がまるで幽玄の様に、青く輝く。 
 「ぬうう・・小賢しいわッ!!」  ・・江田島の剛拳がラオウを狙う。だが全てすり抜け、空を切る。 
そしてついに。  「ぬあああッ」  江田島の咆哮。だがその拳は当たらない。 ・・そしてラオウ。 
まるで風の様に前に出る。ラオウの拳がうなる。 ・・吸い込まれる様に江田島に決まる。一発では終わらない。 
何発も何発も。 ・・ラオウの拳は全て江田島に命中するが、江田島の拳は全て、ラオウの体をすり抜ける。 
 「だ・・ダメじゃあ・・。塾長が殺されちまう・・」  絶望の声を上げる虎丸。しかし桃。江田島を見て言う。 
 「良く見ろ虎丸・・あの人のスケールは俺たちじゃ測れない・・」  虎丸はサンドバック状態の江田島を見る。 
 「なんじゃあ塾長・・。殺されるかも知れないってのに・・笑ってやがる・・」 

ラオウの「無想転生」の前に、成す術無くメッタ打ちにされている江田島 平八。 
だが江田島。不敵な笑いを浮かべたまま。ラオウをまっすぐ見据え、やがて大きく笑い出す。 
 「わははは・・。ワシをここまで追い詰めたのは貴様が始めてだ、ラオウッ!!」 
血まみれになりながら江田島は豪快に笑う。その表情に微塵も動揺は無い。いや、むしろ。 
・・楽しんでいる様な。自分の苦境を、苦戦を。   (恐るべき豪胆さよ、江田島平八・・) 
ラオウに寸毫も油断は無い。「無想転生」は1秒毎に磨き抜かれ、江田島の攻撃全てを受け流す。 
そして攻撃に転ずる度、江田島は死に向かいつつある。 ・・だがこの江田島の余裕はどうだ。 
 「この無想転生とやらを何とかせねば、ワシの鉄拳は届かぬ様だのう・・」  江田島は呟く。 
 「破れはせぬ・・無想転生は北斗最大の奥義。ぼつぼつ死ぬがいい、江田島 平八ッ!!」 
ラオウが必殺の突きを江田島に放とうとする。 ・・その時。江田島は意外な行動に出る。 
 「ワシが男塾塾長、江田島 平八である!!」   江田島は吼えると、思い切り頭突きを放つ。 
だが狙いはラオウではない。 ・・江田島のハゲ頭が突き刺さったのは、地面。 ・・更に一発。 
続けてもう一発。 ・・江田島は地面に向けて、何度も頭突きを放ち続ける。 ・・怒るラオウ。 
 「ぬうう・・!! この拳王を愚弄するとは・・。千の肉片に砕き裂いてくれるわッ!!」 
その様子を見ている虎丸はわめく。   「じ、塾長・・やられ過ぎてどうかしちまったッ!」 
だが桃は。  「虎丸・・俺の考えが正しければ・・。やはり塾長はとんでもない人だぜ・・」  
その時。ピシリ、と何かが裂ける音。 ・・江田島の頭突きにより、地割れが走ったのである。     

亀裂が走る地面。どよめく男塾塾生。信じられぬ表情で地を見るラオウ。そして豪快に笑う江田島 平八。 
 「言ったはずだ・・。己の常識で人を判断すると死ぬ事になるとなッ!!」  そう叫ぶと江田島。 
割れた地割れに手を突っ込み、そのままメキメキと地面を持ち上げる。 ・・ラオウの真下の岩盤である。 
その岩盤をムンズと持ち上げ、そのまま空中に投げ飛ばす。 ・・岩盤ごと空中に放り出されるラオウ。 
 「わははは・・。足場が無い空中では、無想転生とやらも用を成さぬであろう?」  ・・驚愕のラオウ。 
地に落ちようとするラオウの腹に、江田島の鉄拳が突き刺さる。 ・・大量に喀血するラオウ。大騒ぎの塾生。 
 「か・・勝つぞ桃、塾長があの拳王にッ!!」   富樫が桃の肩をつかんで叫ぶ。しかし桃。厳しい表情。 
代わりに伊達が応える。   「いや・・塾長のダメージも大きい。おそらく、お互い後一発の余力しか・・」 
・・荒い呼吸で江田島を睨み付けるラオウ。どこか爽やかな微笑を浮かべながら、ラオウを見る江田島。 
 「決着を付けるか、ラオウ・・」   「面白い・・。次の一撃で貴様の全てを消し去ってくれるわッ!!」 
ラオウ。闘気と殺気が異常に高まり、オーラとなって肉体を包んでいく。オーラが掌に収束し、発射の時を待つ。 
ラオウの目が光る。 ・・この拳王、必殺のあの拳を、全身全霊で。 ・・江田島に叩き込む。 
対して江田島 平八。左手を大きく体の前に出し、右手を腹の脇に置く。 ・・そして異常な呼吸音が男塾に響く。 
江田島最大の奥義の。あの拳である。    ・・しばらくの静寂の後。2人同時に吼え、闘気が放たれる。 
 「滅せい江田島ッ!! 北斗剛掌波ッ!!」    「ラオウよ、これが真の千歩氣功拳じゃあッ〜!!」 

唸りを上げて激突する、強大なオーラ2つ。 ・・ラオウの北斗剛掌波。江田島の千歩氣功拳。 
圧倒的な氣の奔流の剛掌波と、巨大なコブシの形を成す千歩氣功拳は、互角のまま全く相譲ら無い。 
ラオウと江田島のちょうど中間でお互いの氣はくすぶり、1ミリも動かないまま硬直を続ける。 
 「ぬああああああッ!!」   「おおおおおおッ!!」   ラオウと江田島の必死の形相。 
この「氣」のぶつかり合いで遅れを取れば、即ち剛掌波と氣功拳、2発分の衝撃を食らう事になる。 
それを喰らえば、流石のラオウ・江田島といえどもう闘えまい。 ・・つまり正真正銘、最後の勝負。 
・・少しずつ。少しずつ。一方の「氣」が一方の「氣」を圧し始める。 ・・ラオウが江田島を。 
北斗剛掌波が千歩氣功拳を。 ・・上回り始めているのだ。 ・・男塾塾生や村人たちが悲鳴を上げる。 
 「江田島よ・・。やはり貴様におれを止める事など出来ぬ。神はおれと闘いたがっておるわッ!!」 
江田島。その言葉を無視し、逆にラオウに問う。    「ラオウよ・・その強大な力で何を目指す?」 
 「知れた事・・天!! この世に男として生を受けた以上、おれは全てを手に入れるッ!!」 
江田島。ラオウのその言葉に、初めて怒りを表に出す。  「見下げ果てたヤツよ、貴様ッ」
 「ククク・・。負け惜しみか、死ぬがよい江田島ッ!!」   ・・剛掌波が更に氣功拳を押す。 
 「人間立って半畳寝て1畳・・下らぬ野望で人々を泣かせおって・・。貴様にワシは倒せんッ!!」 
だがその言葉とは裏腹に。もう江田島の眼前まで2つの「氣」は迫っている。だが江田島。静かに言う。 
 「貴様は確かに闘気も殺気もワシより上かも知れん・・。だが決定的に貴様に欠けている気がある・・」 
カッ。江田島の目が見開く。  「それは男気だ!! ワシが男塾塾長、江田島 平八であるッ〜!!!」 
・・その気合に江田島の千歩氣功拳。更に一回りも大きく膨れ上がり、ラオウの剛掌波を吹き飛ばす。 
 「ぐうあああッ〜!!」   ・・ラオウの絶叫が響き渡る。 ・・襲い掛かる千歩氣功拳。 ・・そして。 
                                 ・・ラオウ 対 江田島平八、決着。 


必殺の千歩氣功拳の前に、半死半生のラオウ。 ・・だが江田島も最早、余力は無い。 
動かぬ2人。シンとする男塾。 ・・しかし。虎丸の歓喜の声がその静寂を破る。    
 「塾長が・・あの拳王に勝ちおったぁッ!!」   ・・それを契機に爆発する男塾。 
江田島。その騒ぎを気に留めず、ゆっくりとラオウに近付く。江田島を睨み付けるラオウ。 
 (動けぬ・・殺られるのか・・)   江田島。ラオウを見下ろし、その目を覗き込む。 
 「いい勝負だったのう、ラオウ・・」   穏やかで涼やかな笑みを浮かべる江田島。 
江田島に殺気は無い。富樫が叫ぶ。    「塾長、止めを、止めを刺して下さいッ!!」 
だが江田島。その富樫の言葉にも笑みを浮かべたまま。 ・・ゆっくりとラオウに言う。 
 「貴様の目が真に腐っていたのなら・・。この場で叩き殺すつもりでおったが・・。 
  暴虐を装ってもワシの目は誤魔化せんわ。 ・・この勝負は引き分けだ、行くがいい」 
ラオウ。雄々しく、誇り高く立ち上がる。その姿には敗北の影は無い。黒王が寄り添う。 
 「江田島よ・・今日が貴様と・・、男塾との闘いの始まりなのだ。またいずれ・・必ず」 
江田島。莞爾として笑う。  「いつでも来るがいい。ワシは何度でも貴様の前に立ち塞がる」 
・・去り行くラオウ。残された江田島の周りに、笑顔の塾生や村人たちが集まって来る。 
そして江田島。大きく凛々しく、あの言葉を腹の底から。太く爽やかな笑顔を浮かべながら。 
          「ワシが男塾塾長、江田島 平八である!!!」  


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